海外勢の売買は翌週の木曜に出る|財務省の週次統計を無料で読む
会社を辞めた直後、私が一番ほしかったのは「プロが見ている情報」でした。相場で置いていかれるのは、きっと情報が足りないからだと思っていたんです。結論から書きます。私が探していた種類の数字は、財務省が毎週、無料で出していました。しかも公表は対象週の翌週で、時刻は午前8時50分。有料の情報サービスの案内をいくつも開いて比べていた時間は、正直に言えば要らなかった時間でした。
「プロだけが見ている数字がある」と、私は本気で信じていた
脱サラして収入が細くなった時期ほど、私は情報にお金を払いたくなりました。月額いくら、という案内を読みながら、これを契約すれば海外勢の動きが分かるようになるんだろうか、と考えていたんです。相場が思った方向と逆に動くたびに、自分だけが知らない何かがあるように思えました。
そのときの私は、情報の量と結果が比例すると信じていました。だから、無料で公開されているものは中身も薄いはずだ、と勝手に決めつけていたんです。実際に財務省のページを開いたのは、だいぶあとになってからでした。
財務省が毎週出しているのは、どんな統計?
名前は「対外及び対内証券売買契約等の状況(指定報告機関ベース)」といいます。財務大臣から指定された銀行等、金融商品取引業者、保険会社、投資信託委託会社、資産運用会社——この指定報告機関からの報告をもとに、居住者と非居住者のあいだの証券売買を集計したものです。単位は億円。
公表の速さについては、財務省自身がこう説明しています。国際収支統計は月次の計数を翌々月に公表するのに対して、この統計は週次の計数を翌週に、月次の計数を翌月に公表するなど、速報性の高いものになっている、と。実際、令和8年9月17日の木曜には午前8時50分に週次分が出る予定が、財務省の週間予定に載っています。直近では令和8年9月10日が最終更新でした。
直近の1週間で、外と内はどう動いていたか
令和8年9月10日発表分、つまり2026年8月30日から9月5日までの週を並べてみます。ここに私の解釈は入れていません。数字をそのまま写しただけです。
| 区分 | 2026年8月30日〜9月5日 | 前週(8月23日〜29日) |
|---|---|---|
| 対外証券投資 合計(居住者) | −2,658億円 | −7,979億円 |
| うち株式・投資ファンド持分 | −4,816億円 | +358億円 |
| うち中長期債 | +1,119億円 | −8,240億円 |
| 対内証券投資 合計(非居住者) | +8,644億円 | +5,616億円 |
| うち株式・投資ファンド持分 | +6,900億円 | +359億円 |
| うち中長期債 | +4,496億円 | +5,091億円 |
対内の株式は、取得が392,135億円で処分が385,234億円。差し引きで+6,900億円です。売りも買いも40兆円近く動いたうえでの、7千億円弱の偏り——この粒度が見えるのが、ネットの数字だけを眺めているときとの違いでした。ちなみに8月16日から22日の週は対外が−30,338億円、対内が−23,945億円で、直近とはまったく違う顔をしています。1週だけ見ても、あまり意味がないということです。
符号の向きを、私は一度間違えて読んだ
この統計には、知らないと逆に読んでしまう落とし穴があります。ネットのプラスが取得超、マイナスが処分超。これは今の定義です。平成26年1月の取引計上分より前は、対外証券投資について符号が逆でした。プラスが処分超、マイナスが取得超だったんです。
私は古い解説記事を先に読んでしまい、しばらく逆向きに理解していました。過去の数字と並べて眺めていたので、余計に気づかなかったんです。数字そのものより、その数字がどちら向きかの定義を先に確かめる。これは、この統計に限らず効く癖だと思っています。統計表には「四捨五入のため、合計に合わないことがある」という但し書きもあります。
もうひとつ。この統計が今の形で公表されているのは平成17年1月からで、それ以前の『対内及び対外証券投資の状況』とは計上方法が違うため、両者は連続していません。財務省もその旨を明記しています。長期のグラフを自分で作るときは、ここで切れます。
これを見れば勝てるのか?
いいえ。ここははっきり書いておきます。私が実際に何週か追ってみて分かったのは、週次の偏りと、その週の為替の動きは、素直には対応しないということでした。そもそも公表は翌週です。動いたあとに、動いた事実だけが届く。
でも私は、経験からはっきり言えます。翌週に答え合わせができる材料があるかどうかで、相場との距離の取り方は変わります。脱サラ直後の私は、値動きの理由をその場で知りたくて、チャートに張り付いていました。理由が欲しいのに、目の前にあるのは値段だけ。だから余計に離れられなかったんです。
週に一度、木曜の朝に数字を書き写す。それだけで、平日の日中にレートを見に行く回数が減りました。理由が分かるのは翌週でいい、と決められたからです。情報を増やしたのではなく、情報を待つ場所を一箇所に決めたという感覚に近いです。
正直に言うと、有料の情報サービスを検討していた頃の私は、お金を払うこと自体で不安を減らそうとしていたんだと思います。契約すれば、ちゃんとやっている人になれる気がした。でも収入が細い時期に固定費を増やすのは、生活の側から見れば逆方向です。結局、契約はしませんでした。その代わりに開いたのが、この財務省のページでした。無料だから偉いという話ではなくて、自分が本当に見返す頻度を考えたら、週1回で十分だったというだけの話です。
私がこの統計に求めるのを、やめたこと
予測は求めないことにしました。この統計は、過去の1週間に誰がどちら側へ動いたかの記録であって、次の1週間の答えではありません。日本銀行の時系列統計データ検索サイトや、財務省の国際収支統計とあわせて置いておく資料の一つ、という位置づけです。問い合わせ先まで国際局為替市場課国際収支第2係と明記されている、公的な記録です。
脱サラしてから、私は情報との付き合い方をだいぶ変えました。足りないのは情報ではなく、情報を見る頻度の設計のほうだった。「時間の自由」はFXで手に入るのかでも書きましたが、相場に近づくほど不自由になり、決まった時間に決まったものだけを見るようにしたら、生活が整いました。週次統計は、そのリズムを作る側の道具として置いています。
まとめ|探していたものは、無料で翌週に出ていた
海外勢の売買は、翌週の木曜8時50分に、無料で出ます。名前は「対外及び対内証券売買契約等の状況(指定報告機関ベース)」。対外と対内が別の表になっていて、円を売って外へ出る動きと、円を買って入ってくる動きを分けて追えます。符号は平成26年1月の計上分から今の向きになっていて、古い解説と混ざると逆に読めます。この統計は勝ち方を教えてくれませんが、待つ場所を一つ決めさせてはくれました。私にとって価値があったのは、数字そのものより、そこにあった週1回というリズムのほうでした。
本記事に掲載した統計の数値は、財務省「対外及び対内証券売買契約等の状況(週次・指定報告機関ベース)」令和8年9月10日最終更新版および同省の週間予定から引用したものです(単位:億円)。統計は随時更新・改定されるため、実際にご確認の際は必ず最新版をご覧ください。FX(外国為替証拠金取引)は為替相場の変動により損失が生じるおそれがあり、預けた証拠金を上回る損失が生じる可能性があります(元本保証はありません)。本記事は情報提供および筆者の体験の記録を目的としたもので、特定の取引や行動を推奨するものではありません。最終的な判断はご自身の責任で行ってください。参考:財務省「対外及び対内証券売買契約等の状況」https://www.mof.go.jp/policy/international_policy/reference/itn_transactions_in_securities/index.htm/財務省「週間予定」https://www.mof.go.jp/public_relations/weekly_schedule/index.htm。本サイトはアフィリエイト広告(成果報酬型広告)を利用しています。