鉱工業生産8月は−1.7%|「企業の生産計画を先回りすれば勝てる」と思っていた
経済産業省が毎月出している鉱工業指数には、工場がこれから何をどれだけ作るつもりか、という「生産計画」まで付いてきます。会社を辞めてすぐのころ、私はこの計画の数字を、相場の答えが先に書いてある紙のように思っていました。2026年8月分の生産は前月比−1.7%。9月の計画は+3.2%。いまの私は、その2つの数字の間にある、経産省自身が書いた一文のほうを大事に読んでいます。
「工場の計画を先に知れば、為替の先回りができる」と、私は本気で信じていた
脱サラしたばかりのころ、私は「数字の発表を待つより、企業の計画を先に読んだほうが早い」と考えていました。日本は物を作って輸出する国だから、工場が忙しくなれば景気が良くなり、円も買われるはずだ、と。発表の朝は8時50分前から画面の前に座り、計画が強ければ強気に、弱ければ弱気になっていました。
結論から書きます。生産計画の数字で、相場の先回りができたことは一度もありませんでした。それどころか、計画と実績がずれるたびに、私は自分の読みが外れたと落ち込んでいました。ずれるのは当たり前のことだったと知ったのは、ずいぶんあとです。
8月の生産は102.6、2か月続けて下がっていた
経済産業省が2026年9月30日に出した8月分の速報では、鉱工業生産の季節調整済指数が102.6、前月比−1.7%でした。2か月連続の低下です。全15業種のうち12業種が下がり、上がったのは3業種だけでした。
| 2026年8月(速報・季節調整済) | 指数 | 前月比 | ひとこと |
|---|---|---|---|
| 生産 | 102.6 | −1.7% | 2か月連続の低下 |
| 出荷 | 100.8 | −2.5% | 15業種のうち14業種が低下 |
| 在庫 | 97.6 | −0.5% | 3か月ぶりの低下 |
| 在庫率 | 106.3 | +1.7% | 2か月ぶりの上昇 |
下げに効いたのは自動車工業で、普通乗用車や小型乗用車が主な要因でした。次が汎用・業務用機械工業で、コンベヤや運搬用クレーンが下がっています。逆に上がったのは生産用機械工業の金型や個装・内装機械、それに航空機用発動機部品を含む輸送機械工業(自動車を除く)でした。経産省のまとめは「一進一退」で、判断は据え置きです。
7月は「上昇」と出て、あとから「低下」に書き換わっていた
今回の発表文には、小さな注記がありました。7月の生産は、速報の時点では上昇だったのに、確報で下方修正されて低下になった、というものです。8月が「2か月連続の低下」になったのは、この書き換えがあったからでした。
昔の私なら、7月速報の「上昇」を見た日に、もう頭の中で次の一手を決めていたと思います。その前提の数字が、1か月後には逆の向きに変わっている。速報は1枚目の下書きで、清書はあとから来る。雇用統計で味わったのと同じことが、工場の統計でも起きていました。
9月の計画は+3.2%、でも経産省自身が「上振れする」と書いていた
ここが、今回いちばん読み返した部分です。製造工業生産予測指数によると、企業の9月の生産計画は前月比+3.2%、10月はさらに+3.1%の上昇を見込んでいました。9月は11業種のうち7業種が上昇、3業種が低下、1業種が横ばいです。
そのすぐ後に、経産省はこう書いています。生産計画は、生産実績よりも上振れする傾向がある。そのずれを統計的に補正すると、9月の生産実績の見通しは+1.6%になる、と。計画の+3.2%は、補正すると半分になっていました。
| 9月の生産の見通し | 前月比 |
|---|---|
| 企業の生産計画(予測指数) | +3.2% |
| 上振れのくせを補正した見通し(経産省) | +1.6% |
| 差(筆者の計算) | 1.6ポイント |
計画を出す企業は、うそをついているわけではありません。作るつもりの量と、実際に作れた量は、部品の届き方や注文の入り方でずれていく。そのくせを、出している側がわざわざ数字にして添えてくれていました。私がかつて「答えが先に書いてある紙」だと思っていたものは、本人たちが「たぶん、これより少なくなります」と注記した紙でした。
在庫の欄は「積み増し局面」と書かれていた
発表文の後半には、在庫循環という見方も載っていました。出荷と在庫の伸びを組み合わせて、景気の波のどこにいるかを示すものです。経産省によると、2026年の7〜9月期(速報)は「在庫積み増し局面」に位置しています。8月は在庫が−0.5%と減った一方、出荷がそれ以上に減ったので、在庫率は106.3まで上がりました。
正直に言うと、この図の読み方を、私はまだうまく説明できません。分かったのは、1つの月の生産の上げ下げより、出荷と在庫がどう組み合わさっているかのほうが、工場の様子を長く映しているということです。経産省も、在庫削減の効果が出てきた可能性に触れつつ、今後の動向に注視が必要だと書いていました。
10月30日の朝、私がやることは1つだけにした
9月分の速報は、経済産業省の公表予定で10月30日(金)の8時50分です。いまの私は、その時刻に画面の前で待つことはしていません。発表のあと、生産の前月比が、計画の+3.2%と補正後の+1.6%のどちらに近かったかを、ノートに1行書くだけです。
収入が細い月ほど、「先に答えを知りたい」という気持ちは強くなります。経験からはっきり言えます。先回りしようと身構えていたころより、計画と実績のずれをただ記録するようになってからのほうが、数字の中身を落ち着いて読めるようになりました。工場の計画は、相場の合図ではなく、工場の人たちの見込みの記録でした。
まとめ|計画の数字は「補正後」と並べて読む
2026年8月の鉱工業生産は102.6で、前月比−1.7%の2か月連続の低下でした。7月は速報の上昇が確報で低下に書き換わっています。9月の生産計画は+3.2%でしたが、経産省は計画が実績より上振れしやすいことを示し、補正後の見通しを+1.6%としていました。計画の数字と補正後の数字を並べて読むこと。それが、先回りをやめた私の、鉱工業指数とのつきあい方です。
よくある質問
2026年8月の鉱工業生産はどうでしたか?
季節調整済指数は102.6で、前月比−1.7%の2か月連続の低下でした。全15業種のうち12業種が低下しています(経済産業省、2026年9月30日公表)。
製造工業生産予測指数とは何ですか?
企業の生産計画を集計した指数です。2026年9月分は前月比+3.2%、10月分は+3.1%の上昇が見込まれていました。
生産計画はそのまま実績になりますか?
経済産業省は、生産計画は実績より上振れする傾向があるとしています。9月はずれを補正した見通しが+1.6%で、計画の+3.2%より小さくなっていました。
9月分の速報はいつ出ますか?
経済産業省の公表予定では、2026年10月30日(金)の8時50分です。
本記事に掲載した鉱工業指数と製造工業生産予測指数の数値は、経済産業省「経済解析室ニュース(8月の鉱工業生産)」(2026年9月30日公表)から、2026年10月26日に確認して引用したものです。9月分の公表日は経済産業省の統計公表スケジュールによります。計画と補正後見通しの差(1.6ポイント)は筆者が計算しました。FX(外国為替証拠金取引)は為替相場の変動により損失が生じるおそれがあり、預けた証拠金を上回る損失が生じる可能性があります(元本保証はありません)。本記事は情報提供および筆者の体験の記録を目的としたもので、特定の取引や行動を推奨するものではありません。最終的な判断はご自身の責任で行ってください。参考:経済産業省 https://www.meti.go.jp/statistics/toppage/report/archive/kako/20260930_1.html、https://www.meti.go.jp/statistics/toppage/kohyo.html。写真:Openverse(CC0・パブリックドメイン)。本サイトはアフィリエイト広告(成果報酬型広告)を利用しています。